CD製作のきっかけ・ねらい

小さい頃、歌で覚えたことは忘れない

「やさしい英語のうた」は、2001年、「ヘンリーおじさん」として子ども英語の活動をスタートしたときに、企画しました。

英語、特に英会話は音で覚えるべきなのに、日本の英語教育では、そこに力を入れていないことはわかっていました。英語を耳から覚えられるような方法が、何かないかと思っていたのです。

私は、それより以前に「英語で歌う日本の童謡」というCDで、日本の童謡の英語訳を手がけたことがあります。そのときに思ったのですが、どこの国にも童謡はあって、アメリカ人でもフランス人でも、彼らの国の童謡の出だしをちょっと歌ってあげると、続けて歌ってくれる。日本人なら、「どんぐりころころ どんぶりこ~」と言えば、「お池にはまってさあ大変」と、すらすら出るんですよ。でも、「この歌を最後に歌ったのは、いつですか?」ときくと、「さあ、40年、50年も歌ってないですねえ」なんて言われる。

童謡は、不思議と忘れないんです。メロディーも歌詞も。小さい頃、1歳未満から4、5歳くらいまでに歌で覚えたことは忘れない。これを英語教育に活用しない手はないですよね。

それじゃあ何を歌にするかと言うと、フレーズや単語ももちろんですけど、発音を覚えないといけない。ポイントは、日本語にない音です。これをマスターしないと、絶対に通じない。

たとえば、道を教えるときの「turn right」。日本語式に「ターン・ライト」って言っても通じるだろうと思うけど、これがどういうわけか通じない。指差せば別ですけどね(笑)。

まず「ターン」と「turn」は違うし、「ライト」も「right」か「light」かわからない。「turn light」と聞くと、「電気をつけて」って言ってるみたいですからね。「ウォーキング・ゴー・ストレート、ターン・ライト」って言ったら「まっすぐ行って、電気をつけろ?何を言ってるんだ?」と混乱しちゃう。

でも「turn」が発音できれば、「ライト」でも通じる。「LとRの発音が違うけど、右に曲がれって言ってるんだな」と思ってもらえる。逆に、「ターン」がカタカナ発音でも「right」が発音できれば通じるんです。

だから、どうしても小さいうちに「R」や「turn」などの、日本語にはない音をたくさん聞かせて、覚えてもらいたかった。これは文章では、何百ページ書いても説明のしようがない。やっぱり歌がいい。そう思ったんです。

「やさしい英語のうた」を、自分で作ろう!

最初は、自分で作詞作曲をしようとは思っていなかったんです。英語の基礎を学べるような「やさしい英語の歌」を探しました。

でも、いくら探してもないんです。意外かもしれないけど、子どもが英語を覚えるのに役立つ「やさしい英語の歌」は、ほとんど存在しない。「Happy Birthday To You」とか「Ten Little Indians」くらいかな。

たとえば「きらきら星」。「Twinkle Twinkle Little Star」はいいけど、次の「How I wonder what you are」なんて、高校生の英語で、小さい子には難しい。「ロンドン橋」なら「My fair lady」って何だ?と、そこでわからなくなっちゃう。どうしてもっと易しい、「I like ice cream.」「I want a dog.」「I have a brother.」「I love Mommy.」みたいな歌がないのかな、と思いました。

あるとき、英語教材を制作している会社の社長と知り合う機会があったので、きいてみたら、やっぱりそういう歌はないそうなんです。子ども向けの英語の歌のCDは、マザーグースがほとんどだと。

さいわい私は、英語でも日本語でも詞が書けるし、作曲もできるので、自分で作っちゃえばいいと思ったんですね。

それで、6か月くらいかけて、毎日毎日歌を作りました。職人みたいでしたよ。自宅の部屋の1つを仕事部屋と決めて、楽器やパソコンなどを持ち込んで、ワイフに「では、今日も歌を書きに行ってきます」って具合でね(笑)。

歌を作るにあたって、英語教材制作会社の社長からアドバイスされたのは、何か目的のある歌を作ったらどうか、ということ。

たとえば、足し算が覚えられる歌、体の部分を教える歌、「Head, Shoulders, Knees and Toes」が人気だけれど、あの1曲しかないからって。それから、「~して」っていう命令形の歌……アイデアをもらったことで、方向性が決まりました。

それは、「英語の発音を聞かせ、英語の基本となることを、歌を通して自然に覚えられるようにする」ということです。

「日本人の英語」にふれた経験を活かして

そのときに思い出したのが、日本人がカラオケで歌う英語の歌。なぜかメロディーに歌詞が追いつかないんですよ。どういうわけか、遅れていく。そのうちにわかったのは、日本人が教わる英語は
「This is a book.」って感じ。でも、私たちが英語を使うときには、フランス語で言うところの「リエゾン」、前の単語と後の単語の音をつなげて言ってるんです。「ディス イズ」じゃなくて「ディスィズ」。これを勉強できる歌を作ったらどうか?と考えてできたのが「I have a … song」です。

「I
I have
I have a」
この「have」と「a」を、つなげるのがミソ。「アイ ハヴァ」が教えたくて、この歌を作ったんです。

そうやって考えていくと、自分の経験から、アイデアがどんどんわいてきました。

実は以前(ずいぶん昔の話ですが)、アルバイトで、英会話の先生をしていたことがあるんです。中学、高校時代のことでした。まだ、大手の英会話教室なんてない時代ですよ。

インターナショナルスクールに通っていたので、夏休みが3か月あるんです。でも、近所の友達は受験があって、遊び相手がいなくなっちゃった。それで、アルバイトでもしようかなと思って、近所の牛乳屋のおじさんに相談したら「ヘンリーくんは英語ができるんだから、英会話を教えれば?うちの店は駅前で人通りが多いし、ポスターを貼っていいよ」と。そこで生徒を募集したんです。いろんな人に教えましたよ。サラリーマン、大学生、おばあちゃんもいました。教科書を使わない授業が良かったのか、高校1年のときはレッスンをいくつも抱えて、休むひまもないくらい大忙しでした。のべ2千人くらいに教えましたね。
そこで学んだことは2つ。まず、常に新鮮でおもしろいレッスンを心がけて、相手が興味を持つような話をすること。それから、わかりやすく話しかけること。そうすることで、私は日本人に通じやすい英語をマスターしたし、日本人の話す英語も分かるようになってきた。日本人がひっかかる場所には共通のパターンがあることにも、気がついたんですよ。

たとえば日本人に「Do you have brothers?」ときくと、「I have no brother.」。「No brother ?」ときき返したら、今度は「Yes.」。「Yes? Do you have brothers ?」「あっ、No, No. No brother.」なんて。その経験を活かしてできたのが、「Do you have a pet ?」の歌です。

そうやって、英語を学ぶのに必要な要素が、意識的に盛りこまれている歌ばかりなんです。よく、「英語の歌のCDは、たくさん持っているから…」という人がいるけれど、このCDには、今までの英語の歌に欠けているものが、たくさん入ってるんです。単なるエンターテイメントではなく、大切なことがしっかりと身につく歌。それでいて童謡のように、一回覚えたら、大人になってもずっと忘れない歌をめざして作ったんですよ。

しかも、歌っているのは本物の子どもたちですから、かわいいんです。どうも子どもたちは、自分の仲間の声を聞きわける本能みたいなものを持っているようで、「やさしい英語のうた」のCDを聴く子どもたちは、ほとんど例外なく釘づけになりますよ。子どもたちは正直だな~と、いつも感心してしまいます。

メロディー・歌声・レコーディングの秘密

一度聴いたら忘れられないメロディー

曲を作るときに意識したことは、「なるべくシンプルな旋律にする」ということです。

ちょっと前の話ですが、大型コンピューターが話題になったときに、コンピューターに作曲させようというプロジェクトがあったんですよ。バッハやベートーベン、ビートルズの曲……世界中の名曲とされている曲をインプットしたら、どんな名曲ができるんだろうかと。だけど、できたのは、まるで童謡みたいなシンプルな曲だったんです。それで、そのプロジェクトは立ち消えになっちゃった(笑)。でも考えてみたら、名曲とされている曲でも、旋律そのものはシンプル。名曲とされているものほど、シンプルなんです。それで私も、シンプルなメロディーを心がけました。

もうひとつ、「できるだけ狭い音域で作る」ということも意識しました。子どもは音域が狭いんです。1オクターブでも、歌いにくいくらい。だから、特にCD1では、意識的に音域の狭い曲を作りました。

中でも最高にシンプルな、3度だけでできている曲があるんですよ。「Raindrops Falling On My Head」です。「ミドミドレミレドレ~」……ドレミだけでしょ?でもこれは、「ドレミだけで作ろう」と思っていたわけじゃなくて、録音しているときにジャズのミュージシャンに言われて気づいたんです。「Big and Small」なんかも、音域は狭いですね。そんなところが、覚えやすさにもつながっていると思います。

そう言えば、「ヘンリーおじさんの歌って讃美歌に似ていますね」と言われたことがあるんです。

考えてみたら私は、小学生のときから歌が得意で、ボーイソプラノで讃美歌を歌っていたんです。それが頭に残っているんでしょうね。
讃美歌は、シンプルな歌ばかり。教会にはお年寄りも子どもも来るし、あまり難しい歌じゃ歌えないから、シンプルなんです。これは、私の音楽家としての重要な要素のひとつでしょう。

あと、童謡もそうですね。日本の童謡はもちろん、小学生時代には、各国の友達の歌う童謡を聞いて覚えました。フィリピンの友達から教わった「ちょうちょ」の歌なんて、今でも歌えますよ。

そういう音楽的な土台と、日本人に英語を教えて、日本人が間違いやすい英語を知りつくしているということが、このCDに活かされているようですね。ただ作詞作曲ができるだけでも、英語がしゃべれるネイティブスピーカーだというだけでも、この「やさしい英語のうた」はできなかったと、自負していますよ。

子どもをひきつける、子どもの歌声

曲ができて、録音を考えたときに、「子どもの歌は、絶対に子どもが歌うべき!」と思いました。世界的に有名な子ども向けのCDでも、歌っているのは大人の歌手ばかりです。ちょっと想像していただければわかると思いますが、子どもに歌を練習させて、本番の数回できちんと歌わせるのは難しいんです。時間がかかれば、スタジオ代も高くなってしまいますし、編集も大変でしょう。大人の歌手を使うほうが楽。でも、あえて「子どもが歌う子どもの歌」に挑戦しようと決めました。

この「やさしい英語のうた」CDは、英語がわからない子どもでも、曲が始まると釘づけになります。子どもの声は国際語みたいなもの。言語以前の問題で、子どもは子ども同士、仲間の声がわかる。子どもが本当に喜ぶのは、子どもの歌声なんです。

それで、歌ってくれる子どもたちを探すことにしました。ブロードウェーでミュージカル『CATS』などに出演したこともあり、現在は子どもたちに歌のレッスンをしている先生にお願いしたんです。

「子どもの歌を作るプロジェクトに協力してもらえませんか?歌のうまい子を何人か、紹介してほしいんです」と言うと、
「どんな歌なのか、聞いてみないとわからない」。
その通りだなあと思って、先生の前で歌ってみせました。「Do You Have a Pet?」「What Color Do You Like」などでしたね。
歌が終わったら、先生がきいたんです。「何人くらい必要なの?」私が「5、6人かな」と言うと、「だめ、それじゃ足りない。15人くらいは必要でしょう」と言ってくれました。
「今までいろいろな人から頼まれても、こんなことは引き受けたことがなかった。でも、あなたの歌は純粋で、心を打たれた。わたしの生徒たちにも、ぜひ歌ってもらいたい」ってね。
歌詞が子どもの世界をよく表現していて、大人が書いたとは思えない。子どもが自分で書いたみたいな歌だって、気に入ってくれたんですね。

たとえば「Do You Have a Pet?」の、「Do you have a pet? ― No, But I have a brother.」って、会話としてはちょっとおかしいけど、子どもが言いそうなことでしょう?大人にはない発想で、子どもはみんな大喜びする。小さい子が車なんて持ってるわけないのに、「But I have a car.」なんて、男の子が得意になって歌っているのも、おもしろいですよね。

こうして、オーディションを受けて歌のレッスンに参加している子どもたちを紹介してもらいました。3歳から12歳の子どもたちです。CD1のジャケット写真に写ってるのは17人だけですが、写真撮影の日に来られなかった子もいたので、最終的には29名が参加したんですよ。

ミュージカルのようなレコーディング風景

子どもたちに歌を覚えてきてもらって、歌のレコーディングが始まりました。4日間かかりましたね。

ミュージカルスターを目指す子どもたちですから、実は、CD1のほとんどの歌には、振りがついていたんです。踊りながら練習しているリハーサル風景が、写真に残っていますよ。
また、「I'm Sorry」を歌っている男の子などは、歌いながら演技の世界に入っていて、泣きそうな顔をしていました。見ていた大人はびっくり。録音現場はまるで、ミュージカルでしたね。

歌の先生は、歌詞と曲に合ったシンガーを上手に選んでくれました。まず、歌の内容を確実にとらえ、たとえば、なんとなく男の子の要素が強い歌には男の子のシンガーを、という具合です。

また、CD2の「Cat Eyes」のように、幼いほうが雰囲気が出そうな歌の場合は、3歳児を中心にグループを組んでくれました。3歳というと本当に幼いので、先生としても指導するのが大変なのですが、男女5、6名が揃いました。どことなく舌足らずな感じが、なんとも言えない魅力になっていますね。

歌のうまさが重要な場合には、グループの中でもトップクラスのシンガーを選んでくれました。CD2の「I Love You, Daddy」のように、3名で競作をした歌もあります。誰が歌うか決めずに、3人の子どもが別々に録音しました。それぞれ上手なのですが、聞き比べて勝者を決めたのです。また、声の個性や、せりふ回しのうまさで選ばれた子もいます。子どもといっても、厳しい競争の世界があるのですね。もっとも彼らは、しょっちゅうミュージカルのオーデイションなどを受けているので、競争には慣れているのです。強くなるはずですね。

こうして選ばれたシンガーたちは、「自分の曲だ!」という意識を持って練習し、歌いこなしています。自分で自由にアレンジして歌っている部分もあるんですよ。

先生も、子どもが楽しんで歌うので、少しばかり羽目を外して歌っていても注意しませんでした。上手に歌うことより、感情を込めて歌うことを大事にしたのですね。出番を待ちながら周囲で見ていた子どもたちの笑い声が入っている曲もあります。これは、あえて消さないで残してあるんです。

シンガーが笑顔で、体をゆらして楽しい雰囲気で歌っている、これが、聞いている子どもを自然に引きつける秘密だと思いますね。また、ソロとコーラスの組み合わせも、絶妙な楽しさを演出していると思いますよ。

レコーディングには、多いときで15人くらいの子どもが集まりました!その親が15人以上。夫婦で来ることもありますからね。小さい子どももいるから、その面倒をみてくれる係が3人くらい。とにかくすごい人数です。お昼ごはんには、60センチくらいのピザを15箱用意しました!パーティーみたいな光景でしたね。

歌を録音した後の編集には、3週間か4週間かかりました。大変な作業でしたが、完成したCDを聴いたみなさんから、「子どもたちが釘づけになっている」とか、「すぐに覚えて歌いだした」なんて聞くと、自分の子どもがほめられているようで、とても嬉しいですね!

「子どもの世界を表現したシンプルな歌を、子どもが楽しみながら歌う」という方針は間違っていなかったと、確信しています。

ヘンリーおじさんによる全曲ガイド(CD#1)

大曲にこめられた思い、歌詞の中のキーフレーズ、レコーディングの裏話、ちょっと聞いただけでは気づかない遊び心など、ヘンリーおじさん自身による全曲解説です。CDを検討中の方は必見!すでにお持ちの方はぜひ、聞きながらお楽しみくださいね!

M1: I have a …Song

「have」と「a」をつなげて、「ハヴァ」と発音するのがポイントです。単語をつなげて発音するのは、英語ならではの特徴。それを身につけるのに、ぴったりの歌ですね。

歌の最後は、「Du-du-du-du, Yeah!」 と、かっこよく決めてますが、これは歌の先生や、周囲の大人から指導されて歌ったのではないのです。子どもたちが自然に、アドリブで入れました。まるでミュージカルのエンディングのようで、最高ですね!

M2:Do You Have a Pet?

日本人がひっかかりやすい疑問文ですね。答えが「No」のときは、質問文が否定形でも「No」と答えます。答え方を考えるのではなく、自然に言えるようになると、スマートですよ。

お気づきだと思いますが、この歌は、かけあいになっています。兄弟などで、「Do you have a dog?」といった質問に答える形式になっているのです。

M3:Big and Small

「Big, big apple」という歌いだしの部分は、アメリカ生まれの中国人の女の子が歌っています。(ジャケット写真前列左から3人目)よく聞くと、他の子とは少し違う東洋人の声をしていますね。私はインターナショナルスクール出身ですから、いろいろな国の子どもたちの声を聞きわけることに興味があります。それぞれ違った魅力があるのです。

「Bright hot sunshine.」の歌詞のところで、男の子が「hot」と大げさな声を出して歌っていますね。感情を込めて歌っていて、自然とそうなったのです。途中で笑い声が入ってますが、これなども、自然に出たのを残してあります。

M4:Count Your Fingers

子どもの歌でアカペラ(伴奏なし、歌のみ)なんて、ほとんどないと思いますよ。

手と足の指を使って、1から10までの数え歌ですから、お風呂の中などでも使えますね。

M5:Dentist I Don't Like

歯を削る嫌な音がしますね。この音が歌に合わせて、きっちりと入っていることに注目してください。編集の成果です。「Say Ah (口を開けて、アーと言って)」 と、歯医者さんのせりふを言っているのは、録音技術者。苦しそうに「Ahh~」と言っている声は、実はヘンリーおじさんなのです。録音したのは、この歌の編集を何時間も続けて、夜も11時を過ぎ、疲れているときでした。でも、どうしてもこのかけあいを追加したくて、数回の練習の後に録音したのです。終わってプレイバックをしたら、おかしくておかしくて、疲れを忘れて、2人で涙を流して笑ってしまいました。

原曲は、『月』。歌いだしの「出た出た」と「Dentist, dentist」がぴったり合っているでしょう?!「デ」で始まる単語はなかなかみつからなくて、「dentist」が浮かんだときは「これだ!」と思いましたね。

アメリカの子どもたちも、この歌に大喜びしました。私の長男も(彼は本当の歯医者ですので)子どもの患者さんが来ると歌ってあげるそうですよ。

M6:Round and Round

小さい頃に、「ぐるぐる回ると目が回る」って遊んだ経験は、誰にでもありますよね。その遊びを歌にしてみました。Dizzy は、「目が回る」という意味です。右にぐるぐる、左にぐるぐる、そして結果として、「Dizzy now (今は目が回る)」と言いながら、倒れそうになる雰囲気が出てますでしょうか?

ニューヨークにいる作曲家の方に、ほめられた歌です。本職の耳で聴くと、このような歌を書くのは難しいのだとか。ヘンリーおじさんは、気楽な気持ちで歌を書くので、技術的なことなど無関心。だから、CDの解説にも書いてあるように、「子どもが自分で歌を書けたとしたら、ヘンリーおじさんの歌になるであろう」…これには納得できますね。子どもの視点から書かれた歌ばかりなのです。

M7:Touch Your Nose

声の素質を活かして、女の子のシンガー(ジャケット写真前列左端)が選ばれました。

『Head,Shoulders,Knees and Toes』は有名な歌ですが、身体の部分を歌で覚えるのは、楽しくていいですね。CD2には、この歌の続編が収録されています。

M8:Phonic ABC

「Goldfish」と「Hotdog」の部分を歌っている男の子の声が、私の長男の幼い頃の声と似ているのです。ワイフと聞き返しても、驚くほど似ています。

このCDで歌ってくれている子どもたちは、3歳から8歳ぐらいが中心ですが、ひとりだけ高校生がいます。Phonic ABCの先生役の女性で、高校3年生。CDのジャケット写真では、右端に写ってます。歌が上手だし、小さい子どもたちには本当の先生のように優しい態度をとってくれて、録音のときは本当に助かりました。

自閉症で2年間、一言もしゃべらなかった子どもが、この歌を聴いていたら、「Apple a,a,a」のところで「アッアッアッ」だけ言って、親御さんや先生方をびっくりさせたそうです。歌の力の大きさを感じましたね。

M9:I'm Sorry

子どもには、Thank you と同じくらいしっかり教えなければならないのが「ごめんなさい」だと信じます。ちゃんと謝れない子どもは、大人になってから必ず苦労をします。

この歌を歌ってくれた男の子のJason君ですが(黄色いシャツを着て、ジャケット写真に写っています)、ボストン交響楽団と共演をした実力のある歌手でもあります。この歌を録音したときは、今にも泣き出しそうな表情で歌っていて、見ていた大人たちは圧倒されました。

演奏に参加してくれたプロのベースマンは、この歌がいちばん好きだと言ってくれたんですよ。

M10:January to December

ポール・アンカのヒット曲『Diana』を連想させるロックナンバーとなっています。

よく聴くと、「Ya, ya, ya, ya, ya…」の中に、大人の男性の声が混じっています。これは、ヘンリーおじさんの声。子どもたちの歌声をヘッドフォーンで聴きながら、自然と一緒に歌っていたようなのです。

M11:Underneath the Big Old Chestnut Tree

日本でもおなじみの『大きな栗の木の下で』の歌です。1番は男の子が歌っています。もちろん彼は上手なのですが、2番になると、たいていのみなさんは「あれっ」と感じます。声といい、フレーズのとり方といい、子どもとは思えない歌唱力に圧倒されてしまうのですね。

歌っているのはChiaraちゃん、当時は7歳か、そのくらいでした。イタリーとイランのハーフだと思います。歌の先生によると、彼女は天才だそうです。CD2の『I Love You,Daddy』も彼女ですよ。

彼女の歌声に魅了される大人が続出しています。どういうわけか、中年の男性にもうけるのです。魅力的というか、魅惑的というか……とにかくすごいのですね。この歌を何十回もくり返し聴く人を知っています。50歳の外科医の先生ですが、手術のときも、この歌を流しているのだとか。Chiaraがいつか世界的な歌手になることを期待しております。

M12:Teach Me Golf

原曲は世界的に有名ですが、ヘンリーおじさんはこの歌を、「タイガーウッズにゴルフを教えてほしい」という歌にしてしまいました。ゴルフをやる子どもは、増えてますからね。
パットをして、ゴルフボールがホールにカランと入る音は、子どもにはたまらない魅力があると思います。

M13:What Is This?

ヘンリーおじさんのギターの弾き語りになっています。ギターだけというのも、いいものでしょう?あいづちを入れてくれている女の子は3歳です。声とせりふ回しのうまさから選ばれました。かわいいですね。

録音したのを聴いていたら、録音技術者が雑音を指摘するんです。私には全然聞こえないんですけどね。よくよく考えたら、足で拍子をとっている音だったんです。結局その音は消しました。そんな小さな音も聞き逃さない、耳のいい人でしたね。

M14:What Color Do You Like?

12色の呼び方を歌で覚える。こんな歌は、他にはないと思います。
ラテン調の「What color do you like ~」のコーラスの部分も、調子がよくて楽しいでしょう?録音をした子どもたちの間では人気ナンバーワンの歌で、スタジオを出た後でも歌ってましたね。

歌を作ったときは、ギターだけでもっと軽快な感じでした。ちゃんとしたアレンジのカラオケも、もちろん最高ですが、ギターだけの素朴なサウンドも、捨てがたい味があるのですね。

M15:Hello Ha!

日本語の「ハ行」は「ハヒフヘホ」ですが、英語の母音の基本(a,e,i,o,u)に直すと、「ハヘヒホフ」となります。この歌は、その基本を音で教えるために作られました。

やまびこで遊んだ経験は、都会の子どもにはないかもしれませんが、この歌を通して、少しでも味わってもらえればと思います。

この歌を録音するときは大変でした。けっこう高度な技術が要求されるのです。ですので、43名の歌手の中から選ばれた女の子2人に練習してもらって、録音をしました。ハーモニーもきれいですね!

M16:Inchi Centi

「インチ」は、約2.54センチの長さです。でも、この歌は、その「inch」と「centimeter」のお話ではありません。

実は「Inchi」と「Centi」は、ロボットの名前なのです。バッテリーで動くロボットで、変な動作で前進します。子どもたちにロボットのまねをしながら遊んでほしいと願って、書いてみました。

ところで、「centimeter」の「centi」は、英語では「センチ」と発音しません。「センティミーター」という感じですね。録音のときに立ち会った英語の先生から、「センティ」と発音をするのか?と質問されました。でも、ロボットの名前だから、「センチ」で通すこととなりました。「Inchi」と「Centi」のロボットのキャラクターもできているのですよ。見たいですか?

M17:One Plus One Is Two

不思議かもしれませんが、今までたし算の歌ってなかったらしいのです。この歌では、たし算とひき算の言い方が紹介されています。

日本では「One plus one equal two.」と教えるようですが、実際は「One plus one is two.」のほうがポピュラーです。簡単ですからね。

M18:I Love You, Mommy

「ママ、愛してるよ」と、息子や娘に言われたい!という声が多く寄せられました。そこで、この歌が誕生したのです。歌で言ってもらうのもいいですね。

この歌を歌っているのは、『I'm Sorry』と同じ、Jason君ですよ。

M19:Ten Divided by Two is Five

ヘンリーおじさんが特に好きな曲のひとつ。実は、昔聞いたある歌に影響を受けています。16歳くらいの頃から、自分の服には自分でアイロンをかけるようになったのですが、その頃、NHKラジオで毎日流れていた歌が『夏の思い出』です。「♪夏が来れば思い出す~」と「♪Ten divided by two is five ~」……似ているでしょう?これは意識したわけではなくて、後になって「何かに似てるなあ」と考えてみたら、この歌だったのです。

ちょっとしたお遊びも入れています。「♪Ten divided by two is five~」と歌った後に「チーン」とベルの音が入ってるんです。これは「正解!」の意味。機械じゃなくて、本物のベルの音ですよ。いろんなサイズのベルを全部鳴らしてみて、決めました。

#17『One plus one is two』でたし算とひき算の言い方を学び、この歌でわり算の言い方が覚えられます。残りはかけ算だけということになりますが、CD2で実現させました。かけ算の歌は、ロックになっています。

M20:Raindrops Falling On My Head

「ドレミ」の3音だけでできています。

この歌のアレンジはいいですね。冷水ひとみさんの作です。雨だれの音を感じさせるアレンジが、なんともいえません。

M21:Please Don't Go

ヘンリーおじさんが特に好きな歌のひとつです。この1曲のためにジャズ専門スタジオを借りて、ジャズバンドを使って録音しました。ミュージシャンも「いい曲だ」と気に入ってくれたから、演奏ものっていますね。これは歌と演奏の同時録音。ライブと同じ、一発録りなんです。

ヘンリーおじさんのCDには、ひとつ特徴があります。それは、最後の歌(英語ではthe closing song と言います)は、必ず大人のための歌となっていることです。これは、CDを買ってくれるのは大人ですから、「せめて1曲ぐらいは、子ども用でないエンターテーメントを提供しよう」というサービス精神なのですね。

ヘンリーおじさんによる全曲ガイド(CD#2)

CD1とCD2の違いは?と、よくきかれます。一言で言うと、CD1は音と単語を覚えるのが目的。CD2は、歌いながら身体を動かしたり、踊ったりできる曲もあるので、クラスで教材として使うこともできるのです。いずれも特徴がありますので、両方をおすすめいたします。CD1では29名でしたが、CD2ではさらに増えて、43名の子どもたちが歌っています。すごい人数ですよね!CD2のほとんどの歌の前後には、3歳の女の子のコメントが入っています。この子は、実は、日本人のママとアメリカ人のパパを持つハーフなんです。彼女のお姉さんも、『My Favorite Lunch』の中で「Monday is sandwich」と歌っているんですよ!

M1:Let us Clap Our Hands Okay?

『手をたたきましょう』の英語版ですね。「Let us clap our hands okay?」の「okay」がポイント。「Let us clap our hands」だけだと、間延びしてメロディーに合わないんです。かと言って「Let us try to clap our hands?」じゃ面白くない。1週間くらい悩んで、「okay」をつければいいんだ!と思いつきました。楽しくなるし、子ども向けの英語として、やわらかい表現にもなり、理想的です。詞と曲がぴったりにできたときの嬉しさは、格別ですね!

日本語で歌われる『手をたたきましょう』は、歌詞が3番まで。ヘンリーおじさんは6番まで作ってしまいました。あくびをしたり、おばけのまねをしたり、チャチャチャとダンスをしたりできます。クラスで歌うには、最高ですね。

M2:I'm a Ball

ヘンリーおじさん自身が大好きな歌のひとつ。カントリー調なので、踊りたくなります。歌詞に合わせて身体を動かすと、立ったり座ったり、床をゴロゴロしたりできます。

この歌を歌っているのは、Chiaraちゃん。実は、他にも2名が録音し、合計3名で競演となりました。いずれも良い出来だったのですが、最終的にChiaraちゃんの録音が選ばれたのです。

M3:Knock, Knock, Knock

ドアを叩くとき、「トントン」ですか?実は、西洋では2回ノックすることをbeggar's knock(物乞いのノック)と言い、嫌がる人がいるのです。ノックは3回にするほうが無難です。

ドアの外で音がするけど、何だろう?!と、留守番をしている子どもたちが怖がるお話。映画『Home Alone』を連想させますね。でも、犬がワンワンとほえたら、音はしなくなりました。さて、ドアの外にいたのは……?

M4:Touch Your Head

CD1で人気の『Touch Your Nose』の続編です。今回は、身体の部分を、もっとたくさん覚えることができます。

前回同様に、かわいい声で歌っているのは、Sophieちゃん。性格も、とてもかわいい女の子なんですよ。

M5:Cat Eyes

幼い声のほうが雰囲気の出そうな歌ということで、先生が3歳児を中心にシンガーを選んでくれました。

「上がり目、下がり目、くるっとまわってネコの目」、日本ではおなじみの歌ですが、英語にもほしいなと以前から思っていたのです。

M6:Hello, Hello, Moshi Moshi

「でんでんむしむし、かたつむり」は有名な童謡ですが、「むしむし」は、電話の「もしもし」に似てますね。日本語の「もしもし」は、外国の方からすれば、実に楽しい言い方なのです。

いろいろな国の言葉で「もしもし」が紹介されていますが、みなさんはいくつわかりますか?録音現場でも、子どもたちはいろいろな言い方をまねして、喜んでいましたよ。

M7:My Favorite Lunch

「好きな」とか、「ひいきの」という意味のfavoriteが使える歌です。ランチも、変化があって楽しいですね。

「Monday is sandwich」と歌ってくれているのは、日本人のママとアメリカ人のパパを持つハーフの、Brookeちゃんです。

M8:Yeah! Baby! 2×11 is Twenty-Two

かっこよくエレキギターを弾いているのは、エリック・クラプトンとも共演したことのある有名なギタリスト。

録音のときの、おもしろいエピソードがあるんですよ。彼は演奏で失敗すると、自分に腹を立てて、ギターのピックを床に投げつけるんです。それで、右手でポケットから新しいピックを取り出し、次のテイク。また失敗すると、ピックを投げつけて、ポケットから次のを出す……4回もやったら、ポケットの中が空になったみたいで、どうするのかな?と思っていたら、今度は左のポケットから出した(笑)。あらかじめ、たくさん用意していたんですね!

子どもたちはアドリブで自由に歌っています。エンディングは、CD1のジャケット写真にも写っている、カーリーヘアーの男の子のアドリブです。

M9:Butterfly

日本でも昔から歌われている童謡『ちょうちょ』の英語版。でも、原曲はスペインの曲だってご存じでしたか?明治や大正の童謡作家は、外国のメロディーに日本語歌詞をつけていたんですね。私はそれを、さらに替え歌にしました。

歌っているArielleちゃんは、美しい声を持っていますね。実は、声を使いわけることができるのです。今回は、「かわいいタイプの声」で歌ってもらいましたが、「オペラ的な声」で歌うと、すごい迫力なんですよ。

M10:I Wash Hands, You Wash Hands

一緒に手を洗って、ランチを食べて…と、お友達と一緒に、いろいろなことをしながら歌える歌になっています。

数名の子どもたちが交互に歌っていますが、歌詞がちゃんと聞こえるように、英語の先生が発音の指導をしながら進めました。歌詞が聞き取れないと、英語の勉強にはならないからです。

M11.I Love You, Daddy

CD1で紹介された『I Love You, Mommy』を聴いて、Daddyたちが文句を言いました。「パパの歌はないのか?!」。そこで、この歌が作られました。でも今度は、おじいちゃん、おばあちゃん、おじさん、おばさんと注文が殺到するのではないかと、心配をしてます。

実は、録音の時には、誰が歌うか決まっていなかったのです。別々の日に、3人が録音しました。もちろん他の子も上手なのですが、結局勝ち残ったのがChiara ちゃん。他の2人の歌は、それぞれのご両親にプレゼントしました。

この歌は30年後でも、古びることなく聴けると思いますよ。ホンキートンク風のピアノ(※ピアノの調律をずらし、わざと調子が外れたように演奏すること。)も、いいですね!ピアノを習っている方にも、参考になるかもしれません。

M12:.No, No, No

「♪No, No, No, This is not my dog ~!」と、元気よくアドリブで歌っている子がいますね。このような自由な歌い方も、聴いている子どもをひきつけるようです。

曲のアレンジにも注目してください!クラシックの四重奏の感じで仕上げられています。「子どもの頃からクラシック音楽にも親しんでほしい」、そんな願いから作られているのです。

M13:Which is Better?

日本には、「どちらにしようかな、神様の言うとおり」なんていう便利な歌があるけど、英語にはない。そこで、この歌が作られました。

歌っているのは、全員が3歳(ひとり2歳がいます)。舌足らずな歌い方が、たまらないほどかわいい!

M14:Where is the Spring Time?

「春が来た、春が来た、どこに来た」日本の文化ですね~!英語に変えてみても立派に通用するから、嬉しくなります。「日本のすばらしさを外国の人たちに伝えてほしい」との願いを込めて、英語版を書いてみました。

2人の女の子が一緒に歌ってくれています。2人とも上手ですね!この歌が大好きだと言ってくれました。日本の歌が世界に広がり始めた瞬間でしたね。

M15:Snap Your Fingers

口笛と同じように、指を鳴らす人も減ってきているようですが、寂しい限りです。子どもたちにもsnap your fingers と教えてほしいと思います(そのためには、ママやパパもできなければなりませんがね)。これも遊び歌になっているので、指を鳴らすことから始めて、手をたたいたり、足を踏みならしたりして遊べます。クラスで使えますね。

昔のテレビ番組で、オバケ一家の『The Addams Family』というのがあって、テーマ曲に指を鳴らす音が入っていました。懐かしいので、私も、それ取り入れてみました。アメリカの子どもたちの間でも、人気がありましたよ。

M16:.Pigeon Coo Coo

この歌も、ヘンリーおじさんのギターの弾き語りになっています。一緒に歌ってくれたのは、Dianaちゃんです。(CD1のジャケット写真前列右端)彼女も個性的な声をしていますね。8歳ぐらいだった当時は、私の姿を見ると遠くにいても走って来て、「Hi! Uncle Henry!」と抱きついてくれました。孫娘のように愛しく感じたものです。でもあれから3年もたっていますので、次回会うときは、そういうわけにはいかないでしょうね。

ハトの声が入っているのに気がつきましたか?あれは、私が鳴きまねをしているのです。ずいぶん昔になりますが、あの吉永小百合さんに『街のハト』という歌を書いたことがあります。実はその歌のレコーディングにも、ハトの鳴き声で参加しているんですよ。コンサートツアーにも「ハト役」として同行したものです(笑)。

M17:Will You, Will You?

『Row, Row, Row Your Boat』という有名な童謡の替え歌です。3歳の子どもたちを集めて、録音しました。みんな、3歳にしては上手でしょう?!歌をちゃんと習うと、このように上手に歌えるのですね。しかも、マイクを前に、カラオケに合わせての録音ですから、大人にだって、なかなかできることではないのです。

1番の歌詞は、歌の先生の息子さんが歌っています。さすがは、お母さんが歌の先生、お父さんが管楽器の演奏家という音楽一家の長男ですね!

M18:This is My Family

これはすごく讃美歌的な歌だと思います。自分でもお気に入りの歌のひとつですね。

実は、この歌は初め、子どもたち7名ほどで録音されました。子どもたちは上手に歌ってくれたのですが、私なりに持っていたニュアンスと違ったので、自分で歌って録音し直すことに決めたのです。

言葉では説明が難しいのですが、この歌を通して、子どもたちが持っている「大事な世界」を表現したいと思いました。大人の想像以上に小さな世界。お父さんがいて、お母さんがいて、きょうだいがいて、ペットがいて……。ここに登場する人やものが、子どもの世界を作っています。特に家族は、子どもにとって何より大切。それが崩れると、子どもの世界も崩れてしまう。

どんな子どもにも、安定した居場所が必要なのです。いつでも自分の帰りを待ってくれている「家」がある子は、弱いものいじめなんかしません。家族を中心とした世界があるから、安心して成長できるんです。その点を、大人たちはもっと真剣に考えてほしいと思います。

歌が終わっても、最後の音がいつまでも響いているでしょう?これは、意図的に長くしているのです。子どもから見た「大事な世界」の余韻を、ぜひ感じとってください。

M19:Close Your Hands

『むすんで、ひらいて』は、名曲ですね。英語版が完成して、最高に嬉しいです。世界に広まることを祈っています。ヘンリーおじさんは、この歌を3番まで作ってみました。「手を開いて」の後に、腕を組んだり、手をたたいたりして遊べます。この歌も、クラスで使えますね。

「その手を上に」の箇所では、英語で何と表現するか迷ったのですが、最終的には、「And now“Banzai”over your head」としました。Banzai (ばんざい)は、英語にもなっています。録音のときも、子どもたちは喜んで Banzai をしていましたよ。

M20:Goodnight My Little Boy / Girl

子守唄とクリスマスソングは、歌を書く人なら誰でも1曲は書いてみたいと思うものなのです。子守唄は、ここで実現させました。クリスマスソングは、CD3に予定していますよ!

歌の先生がママ役、そして私がパパ役として歌いました。歌の先生は、元ミュージカルスターです。私も負けられません!2人でうまく、雰囲気が出せたと思います。

M21:(Sing Along) The ABC Song

1番と2番の歌詞を歌ってくれたのは、アフリカから来た姉弟でした。彼らのパワーあふれる歌声には、圧倒されましたね。そこから始まり、この歌は全部で15名が歌っています。5歳ぐらいから12歳ぐらいまでの子どもたちですが、すごい迫力だと思いませんか?子どもたちのパワーの爆発です。聴いている子どもたちもつられて、一緒に歌ってしまうことでしょう。

ちなみに、「U is Uncle」のあとに「Henry」なんて歌っているのは、子どもたちのアドリブです(笑)。

M22:.I Want to Take You to Hawaii

「君をハワイに連れて行ってあげたい」、こんなことをご主人に言われたら、どうしますか?この歌は、寒い寒い、2月のNew Yorkで書かれました。歌ができあがって、先生方に聴いてもらうと、みんないっせいにため息。The closing song (締めくくりの歌)に採用が決まりました。録音には、私の2人の息子たちも参加してくれたんですよ。

歌を聴いたワイフがクレームを入れてきました。「歌ばかりで、私をハワイに連れて行ってくれない!」(笑)。

そこで録音から2年後に、家族全員でハワイに行きました。1月の末で、気温は27℃。New Yorkでは最高気温が1℃の頃でした。歌詞の通り、海が見える部屋を借りました。ノンビリした最高のバケーションになりましたね。

ただし、これから歌を書くときは気をつけなければ…と思いました。間違っても、「君に10カラットのダイヤを買ってあげよう」なんていう歌は書きません(笑)!

ヘンリーおじさんから、みなさんへ

「もっと多くの人に!」CDに込められた思い

CD完成までのドラマをお話してきました。
すでにCDを聴いてくださっているみなさんにとって、この「やさしい英語のうた」が、ますます身近に感じられてきたのではないでしょうか。

また、CDを聴いたことのない方にも、「これはちょっと、他の英語の歌とは違うようだ」と感じていただければ、嬉しく思います。

実は完成したCDは、大手レコード会社から発売するという話もあったのです。でも大手レコード会社からCDショップに出荷されても、売れなければ即返品されます。返品されてしまったら、よほどのことがない限り、二度と売れることはないでしょう。

「権利を自分で持っているなら、草の根でコツコツ売ったほうがいい」と、レコード会社にいる友人からアドバイスされたこともあり、自分のホームページなどで販売を始めることにしました。短期的に売れるのではなく、興味を持った方がいつでも手に入れられるようなCDにしたかったのです。

最初は「ヘンリーおじさんの質問箱」(現在は「英語子育て質問箱」という名前になり、アルクのサイトで続いております)で宣伝をして、ご希望の方にお送りする形でスタート。徐々にファンが増え、口コミで広がっていきましたね。CDを実際に聴いた子どもたちが、英単語やフレーズを自然に語りだし、それに驚いたママたちの反響が大きくなっていったのです。

その後、いずみ書房での通信販売が始まり、最近では生協などでも販売されるようになりました。さらに今後は、CDショップでも扱われるようになるなど、徐々に展開が広がっていくと思います。でも、焦らないで進めていくつもりです。良いものは、根気よく売っていけば、必ず売れるものだと信じていますからね。
アメリカで暮らしていると、さまざまな人の話すさまざまな英語を耳にします。当然、それぞれのお国ごとに個性がありますよ。言葉は通じるのが一番なので、難しい表現なんか使えなくても、日本人は日本人の英語でいいんです。ただ最低限、日本語にない音だけは身につけなければ、相手が言っていることもわからないし、自分が言ったことにも理解を示してはもらえません。つまり、会話にならないのです。

子どもも10歳を過ぎる頃から、外国語の音を覚えるのが苦手になります。小学校高学年くらいになると、母国語がうまくなって、かなり複雑なことも話せるようになるんですね。日本人の場合は日本語の発音がしっかりできてくると、英語の発音ができなくなる。だから今後、小学校高学年から英語の勉強が本格的に始まるようですが、あまり効率良く学べる時期だとは思えません。

だからと言って、「発音を覚えるなら今だ!」とばかりに、小さな子どもたちに発音のレッスンばかりさせてたら、飽きちゃう。その点、歌だったら楽ですよね。しかも、まねしろなんて言わずに、BGMとして流しているだけだってOK。英語の音が自然に耳に入って、聞こえた通りに歌おうとするうちに、「turn」のように日本語にない音だって、誰でも簡単に身についてしまうのです。

「ヘンリーおじさんのやさしい英語のうた」は、今までのCDとは違います。子どもたちが釘づけになり、それでいて英語の基礎を、聴くだけで自然と覚えてしまうCDなのです。これこそ「ヘンリーおじさんのマジック」と言われる理由なのです。

「日本のように英語を母国語としない国の子どもたちに、歌を通して楽しく英語にふれてもらいたい」という思いが、このCDには込められています。だから、なるべく多くの人が聴いてくれることを願っています。

これからのヘンリーおじさん

ある人に「ヘンリーおじさんは、子どもの心を失っていない」と言われたことがあります。確かに思い当たりますね。感動しやすいところ、純情なところ、それから、ちょっぴり反抗的なところ……(笑)たぶん私は、そういう目で世の中を見ていると思います。それが、子どもの視点に立った歌を作れる秘訣なんでしょうね。

昔、シンガーソングライター時代に「売れる歌を作らなければ!」と思っていたときは、まったく曲が書けなかったんです。
でも、「やさしい英語のうた」は、売れる目的とは全然違うので、あっという間にできた曲が多いんですよ。『What Color Do You Like?』とか『Do You Have a Pet?』とかは、自然とわいてきました。

これもシンガーソングライター時代、ある人に「歌を書く人はみんな、自分のスタイルを作ろうと思っている。でも、あなたにはもう、あなたのスタイルができている。それが一番」と言われました。子どものような純粋な気持ちを、シンプルなメロディーにのせて歌う、それが私のスタイルなのでしょうね。

今後は、もちろん「やさしい英語のうたCD3」も作りたいと思っていますよ。

CD1とCD2は、それぞれが違う要素を持ってましたので、3枚目は、その中間ともいえる内容にしたいと思います。つまり、オリジナルの楽しい歌もあり、印象に残る歌なども作ってみたいですね。

CD2に入らなかった曲で『This is My Family』の続編、『This is My Hometown』っていうのがあるんです。近くの郵便局、いつも買物    をする本屋さん、お気に入りの靴屋さん……自分の住む町を歌っています。こんな歌も紹介したいですね。

昔からシンガーソングライターと呼ばれる人たちには、一種のお決まりがありました。それは、子守唄とクリスマスソングをレパートリーに入れることです。幸いに、私はCD2で子守唄を録音できましたので、CD3では、どうしてもクリスマスに関係ある歌を入れたいと考えております。といっても、普通の「Merry Christmas」ではない、ヘンリーおじさんらしい歌にしなくては!と考えていますよ。

録音は2008年の10月を目標に準備をしておりますが、どうでしょうか…。New Yorkの冬は寒いですし、曲を作るにはまとまった時間が必要ですので、ひょっとしたら2009年にずれ込んでしまうかもしれません。録音が始まったら、皆さんには誰よりも早くお知らせをいたしましょう。

子ども用だからといって、手抜きは許されません。子ども用だからこそ、本物でなければならないのです。
彼らは怖いですよ。大人の社会のように、お付き合い上の遠慮なんかありません。好きか、嫌いか、何事にもハッキリしているのが子どもたちです。

彼らの期待に応えるため、これからもヘンリーおじさんは、子どもの視点に立った歌をせっせと書き、歌い続けていきたいと思っています。
どうか、応援してください!

インタビュー後記

お話をうかがって、以前聞いたことのある、こんな言葉を思い出しました。
「子どもから大人に成長するということは、木が年輪を重ねて大きくなるのに似ている。
年輪の中心がいつまでも変わらないように、人間の中心となる部分には、いつまでも、子どもの頃の自分がいるものだ」

曲に関するエピソード、歌っている子どもたちのこと、またご自身の子ども時代のこと……生き生きとお話してくださったヘンリーおじさんの心の中には、今でも確かに「ヘンリー坊や」がいるのだなあと感じました。

その反面、すべての子どもたちが楽しく英語を学べることをめざし、ご自身も楽しみながら活動を続けている姿は、理想を実現させる力を持った大人そのものです。

「子どもの心」と「大人の理想」、この両方を持つヘンリーおじさんだからこそ、子どもたちが夢中になって、しかも学習として役立つ英語の歌を作り出すことができたのではないでしょうか。

人の心を動かすものには、それだけの思いやエネルギーが込められているのだなあと実感し、「やさしい英語のうた」の秘密が、少しだけわかったような気がしました。

CD3の完成が、今から待ち遠しいですね!

(インタビュー:黒澤チハル)


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