- 一度聴いたら忘れられないメロディー
- 子どもをひきつける、子どもの歌声
- ミュージカルのようなレコーディング風景

1.一度聴いたら忘れられないメロディー
曲を作るときに意識したことは、「なるべくシンプルな旋律にする」ということです。
ちょっと前の話ですが、大型コンピューターが話題になったときに、コンピューターに作曲させようというプロジェクトがあったんですよ。バッハやベートーベン、ビートルズの曲……世界中の名曲とされている曲をインプットしたら、どんな名曲ができるんだろうかと。だけど、できたのは、まるで童謡みたいなシンプルな曲だったんです。それで、そのプロジェクトは立ち消えになっちゃった(笑)。でも考えてみたら、名曲とされている曲でも、旋律そのものはシンプル。名曲とされているものほど、シンプルなんです。それで私も、シンプルなメロディーを心がけました。
もうひとつ、「できるだけ狭い音域で作る」ということも意識しました。子どもは音域が狭いんです。1オクターブでも、歌いにくいくらい。だから、特にCD1では、意識的に音域の狭い曲を作りました。
中でも最高にシンプルな、3度だけでできている曲があるんですよ。「Raindrops Falling On My Head」です。「ミドミドレミレドレ〜」……ドレミだけでしょ?でもこれは、「ドレミだけで作ろう」と思っていたわけじゃなくて、録音しているときにジャズのミュージシャンに言われて気づいたんです。「Big and Small」なんかも、音域は狭いですね。そんなところが、覚えやすさにもつながっていると思います。
そう言えば、「ヘンリーおじさんの歌って讃美歌に似ていますね」と言われたことがあるんです。
考えてみたら私は、小学生のときから歌が得意で、ボーイソプラノで讃美歌を歌っていたんです。それが頭に残っているんでしょうね。
讃美歌は、シンプルな歌ばかり。教会にはお年寄りも子どもも来るし、あまり難しい歌じゃ歌えないから、シンプルなんです。これは、私の音楽家としての重要な要素のひとつでしょう。
あと、童謡もそうですね。日本の童謡はもちろん、小学生時代には、各国の友達の歌う童謡を聞いて覚えました。フィリピンの友達から教わった「ちょうちょ」の歌なんて、今でも歌えますよ。
そういう音楽的な土台と、日本人に英語を教えて、日本人が間違いやすい英語を知りつくしているということが、このCDに活かされているようですね。ただ作詞作曲ができるだけでも、英語がしゃべれるネイティブスピーカーだというだけでも、この「やさしい英語のうた」はできなかったと、自負していますよ。
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